今回は一定数愛用者のいる対天守閣美濃を題材としました。
先手の方は【第一局】に引き続いて二回目の登場となるT氏。この方は先後問わず四間飛車穴熊を指しこなしている方で、非常に手慣れている印象が強いです。 今回の棋譜は終盤での難しい手はありませんが、良くなった局面から自然な手でミスなく相手をぐんぐん引き離して快勝しており、教科書のような綺麗な棋譜といえるでしょう。
先手:四間飛車穴熊(T氏)
後手:天守閣美濃
▲7六歩 △8四歩 ▲6六歩 △3四歩 ▲6八飛 △6二銀
▲7八銀 △5四歩 ▲4八玉 △4二玉 ▲3八玉 △3二玉
▲2八玉 △1四歩 ▲1八香 △5三銀 ▲6七銀 △5二金右
▲1九玉 △2四歩 ▲2八銀 △2三玉 ▲3九金 △3二銀
▲5八金 △7四歩 ▲4八金寄 △8五歩 ▲7七角 △6四銀
図は後手が△64銀と上がり、仕掛けを見せたところ。ここは▲78飛と先受けしておくのが振り飛車の基本。方針としては後手陣は穴熊に比べてバランス型であるので、先手は無理をすると押さえ込まれる。したがって、普通の振り飛車のように自然に捌くのが良い。具体的には本譜のように三間に回って飛車交換を視野に入れるのが自然な考え方だろう。
ちなみに相手が天守閣でなく急戦の構えで先手が右金を6九に保留していると、△64銀に対しては7筋を受け流し、急所を目指す▲36歩のような手が本線に上がってくるだろう。その戦型は振り飛車らしさとは離れた非常に穴熊らしい戦いとなる。
1図からの指し手
▲7八飛 △7五歩 ▲9八香 △7六歩 ▲同 銀 △7二飛
2図からは本譜は①▲88角とした。これは考慮時間を見るにおそらくこの形を常用、研究していると思われるので、実戦的には問題はないのだろう。しかし、②▲65歩もぱっと見える有力手で、ソフトは300点ほど差をつけて(この戦型では誤差とは思うが)そちらを推していたので一応紹介しておく。▲65歩以下は△55歩、△53銀、△77角成、△55銀(参考図)などが考えられどれも一局。個人的には後手の手が多いので研究が困難で大変だが長い中盤になりそうで楽しみも多い展開だと思う。
他には消極的だが③▲67銀とし、△75銀に▲65歩とする狙いも考えられ、2図からどれを選ぶかは好みにもよるだろう。
2図からの指し手
▲8八角 △8六歩 ▲同 歩 △6五銀 ▲6七銀 △7八飛成
▲同 銀 △6六銀 ▲7九歩 △7七歩 ▲同 銀
3図は後手の手番で色々考えられそうなところ。先手としては捌かせてもらえると堅陣を活かしてよくなりそうだ。
本譜は△87飛。▲66銀を防ぎつつ根こそぎいってしまおうという手だが▲71飛で7筋に利かせるのが当然ながら好手で、△73歩と打つようでは後手を引いてしまった。
図では△87歩と打つべきで、以下▲99角△55銀▲71飛△69飛(参考2図)と先手の角銀を捌かせないようにしつつ飛車で桂香を拾う構想でいけば先手が角と銀の捌き方が難しく後手良し〜優勢だった。
この手があるため本来図の前で工夫しなければならなかったか。厳密にいえば本譜△65銀は疑問で▲75銀という手があるのだがこれは人間では難しい変化があり指しにくい。そもそも△65銀以外にも先手自信ない変化が多いためこの局面を想定すること自体が難しい。そこで戻って2図ではやはりソフトの見解を踏まえて▲65歩が優ったのかもしれない。ここは研究課題と思うがややマイナーな天守閣美濃に対してどれほどのリソースを割けるかは難しいところ。
4図は二枚飛車で分かりやすい攻めのある先手が、既に差をつけている局面。ここからは▲53桂が気持ち良い攻め。次の一手ならば図を見た瞬間に浮かばないといけない手で、こういう手で剥がせるようになってしまうと普通は攻めが筋に入っていると思う。
以下△同金はやむを得ないが4一で2枚の金駒を剥がし、弾かれても手順に香を取って気持ちがいい。そこからの手順も無理なく自然な攻めで参考になる。
4図からの手順
▲5三桂 △同 金 ▲4一飛成 △同 銀 ▲同 龍 △3二銀
▲9一龍 △9八成銀 ▲3一銀 △8八角成 ▲2二金 △3三玉
▲3二金 △同 玉 ▲5一龍 △4一香
図からは難しい指し手をする必要もなく、当然▲42銀打と絡み付いて瞬間3枚の攻めだが来れない形である。以下の進行は勝ち方は色々あるが、先手は▲23香を決め手にする方針で正確に寄せ切っている。
終盤で決め方が複数あるときに、前もってある手を決め手にして寄せ切るというプランを定めておくことは逆転負けをしない上で重要な考え方だと思う。
5図からの手順
▲4二銀打 △同 香 ▲同銀成 △2二玉 ▲5三龍 △7五角
▲6四歩 △同 角 ▲2三香 △同 玉 ▲6四龍
まで87手で先手の勝ち
投了図以下は△同歩なら▲32角以下詰み。粘るなら△22金くらいだが、▲53竜で必勝だろう。
本局は序盤で難しい変化もあり、正しく指されれば先手大変だったが、一旦先手が良くなってからは危なげなく勝ち切った快勝譜といえるだろう。
先手の方は【第一局】に引き続いて二回目の登場となるT氏。この方は先後問わず四間飛車穴熊を指しこなしている方で、非常に手慣れている印象が強いです。 今回の棋譜は終盤での難しい手はありませんが、良くなった局面から自然な手でミスなく相手をぐんぐん引き離して快勝しており、教科書のような綺麗な棋譜といえるでしょう。
先手:四間飛車穴熊(T氏)
後手:天守閣美濃
▲7六歩 △8四歩 ▲6六歩 △3四歩 ▲6八飛 △6二銀
▲7八銀 △5四歩 ▲4八玉 △4二玉 ▲3八玉 △3二玉
▲2八玉 △1四歩 ▲1八香 △5三銀 ▲6七銀 △5二金右
▲1九玉 △2四歩 ▲2八銀 △2三玉 ▲3九金 △3二銀
▲5八金 △7四歩 ▲4八金寄 △8五歩 ▲7七角 △6四銀
図は後手が△64銀と上がり、仕掛けを見せたところ。ここは▲78飛と先受けしておくのが振り飛車の基本。方針としては後手陣は穴熊に比べてバランス型であるので、先手は無理をすると押さえ込まれる。したがって、普通の振り飛車のように自然に捌くのが良い。具体的には本譜のように三間に回って飛車交換を視野に入れるのが自然な考え方だろう。
ちなみに相手が天守閣でなく急戦の構えで先手が右金を6九に保留していると、△64銀に対しては7筋を受け流し、急所を目指す▲36歩のような手が本線に上がってくるだろう。その戦型は振り飛車らしさとは離れた非常に穴熊らしい戦いとなる。
1図からの指し手
▲7八飛 △7五歩 ▲9八香 △7六歩 ▲同 銀 △7二飛
2図からは本譜は①▲88角とした。これは考慮時間を見るにおそらくこの形を常用、研究していると思われるので、実戦的には問題はないのだろう。しかし、②▲65歩もぱっと見える有力手で、ソフトは300点ほど差をつけて(この戦型では誤差とは思うが)そちらを推していたので一応紹介しておく。▲65歩以下は△55歩、△53銀、△77角成、△55銀(参考図)などが考えられどれも一局。個人的には後手の手が多いので研究が困難で大変だが長い中盤になりそうで楽しみも多い展開だと思う。
他には消極的だが③▲67銀とし、△75銀に▲65歩とする狙いも考えられ、2図からどれを選ぶかは好みにもよるだろう。
2図からの指し手
▲8八角 △8六歩 ▲同 歩 △6五銀 ▲6七銀 △7八飛成
▲同 銀 △6六銀 ▲7九歩 △7七歩 ▲同 銀
3図は後手の手番で色々考えられそうなところ。先手としては捌かせてもらえると堅陣を活かしてよくなりそうだ。
本譜は△87飛。▲66銀を防ぎつつ根こそぎいってしまおうという手だが▲71飛で7筋に利かせるのが当然ながら好手で、△73歩と打つようでは後手を引いてしまった。
図では△87歩と打つべきで、以下▲99角△55銀▲71飛△69飛(参考2図)と先手の角銀を捌かせないようにしつつ飛車で桂香を拾う構想でいけば先手が角と銀の捌き方が難しく後手良し〜優勢だった。
この手があるため本来図の前で工夫しなければならなかったか。厳密にいえば本譜△65銀は疑問で▲75銀という手があるのだがこれは人間では難しい変化があり指しにくい。そもそも△65銀以外にも先手自信ない変化が多いためこの局面を想定すること自体が難しい。そこで戻って2図ではやはりソフトの見解を踏まえて▲65歩が優ったのかもしれない。ここは研究課題と思うがややマイナーな天守閣美濃に対してどれほどのリソースを割けるかは難しいところ。
ちなみに筆者の個人的見解としては、駒組み段階で飛車交換に備えて左金を5八で保留し、▲36歩などを優先させたいと考えている。そうすれば後手の飛車の打ち場所に制約ができるため仕掛け自体を牽制できるし、天守閣美濃に対してはどこかで▲35歩が急所になるからだ。
3図からの指し手
△8七飛 ▲7一飛 △7三歩 ▲8一飛成 △7七銀成 ▲同 角 △6六銀
▲7八銀 △7七銀成 ▲8七銀 △同成銀 ▲7一飛 △4二金寄3図からの指し手
△8七飛 ▲7一飛 △7三歩 ▲8一飛成 △7七銀成 ▲同 角 △6六銀
4図は二枚飛車で分かりやすい攻めのある先手が、既に差をつけている局面。ここからは▲53桂が気持ち良い攻め。次の一手ならば図を見た瞬間に浮かばないといけない手で、こういう手で剥がせるようになってしまうと普通は攻めが筋に入っていると思う。
以下△同金はやむを得ないが4一で2枚の金駒を剥がし、弾かれても手順に香を取って気持ちがいい。そこからの手順も無理なく自然な攻めで参考になる。
4図からの手順
▲5三桂 △同 金 ▲4一飛成 △同 銀 ▲同 龍 △3二銀
▲9一龍 △9八成銀 ▲3一銀 △8八角成 ▲2二金 △3三玉
▲3二金 △同 玉 ▲5一龍 △4一香
図からは難しい指し手をする必要もなく、当然▲42銀打と絡み付いて瞬間3枚の攻めだが来れない形である。以下の進行は勝ち方は色々あるが、先手は▲23香を決め手にする方針で正確に寄せ切っている。
終盤で決め方が複数あるときに、前もってある手を決め手にして寄せ切るというプランを定めておくことは逆転負けをしない上で重要な考え方だと思う。
5図からの手順
▲4二銀打 △同 香 ▲同銀成 △2二玉 ▲5三龍 △7五角
▲6四歩 △同 角 ▲2三香 △同 玉 ▲6四龍
まで87手で先手の勝ち
投了図以下は△同歩なら▲32角以下詰み。粘るなら△22金くらいだが、▲53竜で必勝だろう。
本局は序盤で難しい変化もあり、正しく指されれば先手大変だったが、一旦先手が良くなってからは危なげなく勝ち切った快勝譜といえるだろう。
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