今回は対ミレニアム生物流の研究記事の続きとして、先手がミレニアムを目指してきた場合の後手の成功例をご紹介いたします。
 再掲1図から進めていきます。

1図からの指し手
▲6六角△9二香▲7七桂△9一玉▲9六歩△8二銀▲8八銀△7一金▲8九玉△5二金▲7九金△7四歩▲5九金△5四歩▲6九金右△5三金▲7八金右△6四金

 2図は後手が△64金と上がった局面で、生物流ならではのスピードを活かして7筋攻めを見ています。
 先手としてはここで選択肢が分岐します。
①▲57角
②▲57銀
 の2通りがあります。
 この記事ではまず①▲57銀から調べましょう。▲57銀の意味は、当たりの強い7筋を避け、かつ▲24歩からの攻めも睨んでいることで、類型のノーマル△64金型では実戦でも指されることの多い指し方です。
 対して後手は5筋を攻める手や△45歩と角筋を攻める手も同じく有力ですが、ここでは△72飛を本筋とします。
2図からの指し手
▲57角△72飛

 3図ではまた先手の手が分岐します。すなわち、
⑴▲24歩
⑵▲59銀
です。まず▲24歩から調べます。これはストレートな仕掛けですね。
 後手も2筋突破は許せないので△22飛と常套手段を使って受けます。対して先手も▲33角成とはできないため▲25歩と支え、△75歩と返して4図。
3図からの指し手①
▲24歩△同歩▲同角△22飛▲25歩△75歩

 ここで先手としては△76歩があるため角を引くわけにはいきません。しかし▲75同歩も△76歩で不満です。桂を跳ねてもすぐの端攻めはないことに注目してください。
 そこで▲33角成△同桂▲53角と切り込むことになります。
 ▲53角は部分的に非常に厳しい手で、△42銀▲44角成は先手はっきり優勢です。後手の銀が後手の飛車を狭めている一方、先手は2筋が確実に破れそうですね。
 そこで▲53角には△76歩!が知らないと指せない好手。▲31角成が飛車当たりですが構わず△77歩成と踏み込んで結果1図に進みます。
4図からの指し手
▲33角成△同桂▲53角△76歩▲31角成△77歩成

 結果1図で、▲22馬とすると、その瞬間先手の大駒の働きが死んでいることから、△78と▲同金△77歩▲同銀△65桂の攻めがうるさいです。いざとなれば△75金や△45桂の応援の筋もあり、厳密な形勢はまだ難しいものの実戦的には先手が受け切るのは困難でしょう。
 図で▲同銀とするのもそこで△72飛と逃げておいてやはり後手の攻めが止まらない格好。先手は歩が一枚しかないのも懸念です。
 このような展開は穴熊の得意分野。よって3図まで戻り、囲いを固める▲59銀を調べましょう。
 ▲59銀には当然ながらシンプルに7筋を攻めるのが後手の狙い筋です。
3図からの指し手②
▲59銀△75歩▲同歩△同金

 3図では△76歩を消す▲76歩もありますが、瞬間歩切れになる上に▲85桂で端攻めができないのでやりづらいでしょう。また、△同金▲24歩に△同歩だけでなく△45歩と77を攻める手もあり、こちらもなかなか大変です。
 よって3図では桂頭を受けずに▲24歩とするところでしょうか。しかし、△同歩▲同角にいきなり△76歩と打つのが好手。▲33角成から飛車を成らせても大丈夫と見ています。
5図からの指し手
▲24歩△同歩▲同角△76歩▲33角成△同桂▲21飛成△77歩成▲同銀△64角

 結果2図は、前回記事で紹介した生物流のメリットである、不動銀が竜の利きをシャットアウトしている形です。後手は△76歩や△85桂、△65桂、△45桂の筋など攻めに困らず先手は逆に攻めあぐねている印象ですね。 
 図からは▲76歩△同金▲同銀△同飛▲77歩△56飛▲68銀が一例でしょう。しかしこれも後手ペースの進行と思います。

 以上、今回は2図から①▲57角を調べ、どれも後手有望でした。そこで次回の記事では難敵②▲57銀を調べます。